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目次
◆季刊夏 将棋天国VOL.14 <特別企画>大山康晴十五世名人に聞く ──まぼろしの大野・大山十番将棋 Part2
※この記事は将棋天国社から許可を頂いて転載しています。
◇前回の記事(Part1)
前回のPart1の角落ち戦の対談記事はこちら。
◇今回紹介する棋譜を初手から最後まで並べたい方はこちら
今回のPart2で紹介する記事の棋譜はこちら。
◎今回のPart2の棋譜 ⇒ 【名局スクリーン】まぼろしの大野・大山十番将棋 香落ち戦 1940年11月17日 木見会の一局 を並べる【大野の捌き】
こちらに今回掲載した「まぼろしの大野・大山十番将棋 香落ち戦」の棋譜を初手から30枚以上の盤面図を使って最終手まで並べた記事があります。 本記事は図が少なくて盤面が追いにくいので、まずはこちらでこの一局について理解してから、本記事の大山先生の解説を読むのがオススメです。
◆本編『季刊夏 将棋天国VOL.14 <特別企画>大山康晴十五世名人に聞く ──まぼろしの大野・大山十番将棋 Part2』
『季刊夏 将棋天国VOL.14』昭和57年7月10日発行 P30「<特別企画>大山康晴十五世名人に聞く ──まぼろしの大野・大山十番将棋」より
中戸 それでは引き続いて香落ち戦の方をお願いします。 私はさきほどのお話の昭和十七年に発表された一局を知らないのですが、どんな将棋なんですか。
坂本 大野先生が3四銀、3二飛と構え、大山先生が3六歩と歩交換に出たとき、上手から4五歩と大さばきになりました。 終盤では大山先生が勝っていましたが、一手の過失で大野先生の逆転勝ちと解説にありました。 とにかく迫力あふれる名局でした。
宮崎 先生は香落ちについてどう思われますか。
大山 現在は平手オンリーで、奨励会以外の公式戦では香落ちがありません。 平手とはまた違った味なので、私としては時に指してみたいと思っています。
昭和十五年十一月七日
木見会 (第二十六回)香落ち
△七段 大野 源一
▲四段 大山 康晴△3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩
△3三角 ▲1六歩 △5二飛 ▲5六歩 △6二玉 ▲4八銀
△7二玉 ▲6八玉 △4二銀 ▲7八玉 △5三銀 ▲6八銀
△6四銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲5八金右 △7四歩 ▲1五歩
△6二銀 ▲1八飛 △1二飛 ▲5七銀右 △5二金左 ▲3六歩までで第一図。
宮崎 対局日が十一月十七日。 これは御城将棋の日ですね。
大山 大野さんが、今日は御城将棋の日だから、がんばるんだぞと激励されたのを覚えています。
中戸 上手の構えは大野先生の得意形でしょうか。
大山 大先輩の神田辰之助九段がよく指していたもので、私どもは関西流と呼んでいます。
坂本 上手の6四銀は中央突破の含みですか。
大山 下手の出ようによっては必ずしも強行突破ではなく、7三銀と引いて持久戦を目ざす緩急両様の含みを持っています。
宮崎 私も上手のこの形が好きでよく指すのですが、なかなかうまくいきませんね。
中戸 上手の1二飛を除くと現在の平手振り飛車によく似ていますね。
大山 大ゴマ交換の大さばきになれば、上手は香がないので、かえって有利です。 私は極力持久戦に持ち込んで、おさえ込むつもりでした。
(第一図以下の指手)
△7三銀引 ▲4六歩 △6四歩 ▲6六歩 △8二玉 ▲6七銀
△7二金 ▲6八銀 △5一角 ▲7七銀 △8四歩 ▲8六歩
△6三銀 ▲7九角 △4二角 ▲8八玉 △6二銀 ▲7八金
△7三桂 ▲6八角 △3三角 ▲8七玉 △4三金 ▲4七金
△5二飛 ▲5八飛 △7一金 ▲5九角 △7二銀 ▲2六角までで第二図。
坂本 大野先生の7三銀引で、いよいよ持久戦ですね。
宮崎 大山先生も角道をとめましたが、3七桂、4八飛、4五歩の攻めはないのですか。
大山 ないことはないのですが、私も持久戦が好きですし、それで悪くないと思っていましたね。
中戸 双方銀矢倉と見えましたが、大野先生の6二銀はどう言う意味ですか。
大山 がっぷり組んでは双方手詰まりの恐れがあるので、桂をさばく意味です。 よほど攻めに自信がないとこの手は指せません。
宮崎 大野先生の7一金は面白い手ですね。
大山 格別の攻めがないので駒のくりかえの意味が強いと思います。 私の2六角で攻めの態勢が出来ました。
坂本 我慢くらべ、辛抱くらべの将棋ですね。
大山 こんな将棋は短期を起こした方が負けです。 私は千日手も辞せずと覚悟を決めていました。
(第二図以下の指手)
△6三銀直 ▲3七桂 △6一金 ▲5九飛 △4二角 ▲1八香
△5三角 ▲1九飛 △3三桂 ▲2九飛 △6二角 ▲8八玉
△4二飛 ▲2八飛 △5三金 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 角
△4五歩 ▲3四歩 △4四金 ▲3三歩成 △3五金 ▲4二と
△4六歩 ▲4八金 △3六歩 ▲4五桂 △同 金 ▲4一飛まで第三図。
中戸 大山先生が端にねらいをつけたのに、大野先生が3三桂とは大胆不敵ですね。 1筋が無防備で、簡単に破れそうですが。
大山 これが大野一流の焦土戦術で、左翼をあけ渡して中央から突貫する含みです。 私もこれでしばしば苦杯をなめさせられています。
坂本 今にも決戦になりそうですが、案外、手待ちが続いていますね。
宮崎 大山先生が3五歩と仕掛けたので面白くなりましたね。
中戸 大野先生の4五歩で、普通に3四歩ならどうなりますか。
大山 それでは私の方は1三角成ですから上手は指すところがありません。 4五歩は唯一の勝負です。
宮崎 アッと言う間に大変な決戦になりましたね。 この岐れはどちらがいいのですか。
大山 私は4一飛と先着出来たのでいくらかいいと思っていましたが、大野さんの二枚のタレ歩が不気味で、まだまだ安心出来ません。
(第三図以下の指手)
△3七歩成 ▲同 金 △1九角 ▲3八飛 △3六歩 ▲同 金
△4七歩成 ▲4五金 △3八と ▲4三桂 △4八飛 ▲5一桂成
△4五飛成 ▲6一成桂 △同 銀 ▲同飛成 △7一金 ▲5二と
△6一金 ▲同 と △7二玉 ▲6二と △同 玉 ▲3三角
△4一桂 ▲5一銀 △5三玉 ▲4四歩 △5二銀 ▲6三金
△同 玉 ▲6二金(投了図)まで、百二十二手で下手の勝ち。中戸 大野先生の猛反撃が始まりました。 4七歩成で大山先生の方も容易でないように見えますが・・・・・。
大山 飛車を見切っても、と金がソッポにゆくし、4三桂はねらっていた手です。
宮崎 なるほど俗手の好手ですね。
坂本 大野先生の7一金に、5二とと迫りましたが、竜を逃げる手はないのですか。
大山 竜を捨てても寄せ切れると見ていました。
中戸 大野先生の7二玉で3五角と逃げては・・・・・・。
大山 それなら6二金で十分です。
中戸 大野先生の玉は裸になりましたが、しかし竜で守っているので、なかなか寄らないように見えましたが・・・・・・。
坂本 3三角がすばらしい寄せですね。
宮崎 大野先生が4一桂と受け、5一銀の王手を喫していますが、4二歩はありませんか。
大山 私の方が堅いので、4四金ぐらいでいいでしょう。
中戸 先生の6三金はすごい手ですね。
大山 平凡に6二金でも勝ちですが、5五歩で長引きます。 6三金で詰みがあるのですから、当然詰ますべきです。
坂本 大山先生の3三角、4四歩がよく利いていますね。
宮崎 この将棋は序盤が長く、中終盤がその割に短かったですね。 とにかく力の入った大将棋で感心しました。
中戸 大野先生との十番将棋は全部指したのですか。 成績はどうだったのですか。
大山 全部指して指し分けぐらいだったと記憶していますが、ハッキリしませんね。
坂本 先生のご厚意で十番将棋のうちの三局だけが世に出たわけですが、その他の棋譜もないものでしょうか。
大山 棋譜を公開したことはりませんが、ノートをよく整理してみればまだ見つかるかも知れません。 もし見つかったらまたお知らせすることを約束します。
中戸 『天国』のため、全国の将棋ファンのために有難いお言葉です。 大野先生は交通事故で亡くなられましたが、全く残念でなりません。 謹んで大野先生のご冥福をお祈りします。
大山 兄弟子のご恩は筆舌に尽くせませんが、大野さんが委員長を務めて気にかけておられた関西会館の建設は後輩の私どもで必ずやり遂げるつもりです。 全国ファンのご協力を切にお願いします。
坂本、中戸、宮崎 本日はお疲れのところ、長時間のおつき合い本当に有難うございました。
これで『まぼろしの大野・大山十番将棋』の記事は終わりです。
この香落ちは、大野先生・大山先生が両者振り飛車党だからか、お互い一度戦いが始まると一直線の鮮やかな捌き合いとなりました。
一度下記の棋譜を見ればわかりますが、なんと言っても見所は振り飛車党の大野先生の序盤です。
例えば下の実戦1図の次の一手は、大野先生の棋風を象徴した一手で非常に軽い捌きの一手です。
読者の皆さんは、上手の次の一手がわかるでしょうか?
【実戦1図は68手目▲1九飛まで】
一見1筋が受からないようだが、ここで捌く。
もしかしたら有段者の振り飛車党の方なら、感覚的に見えやすい手かもしれません。
現在もA級棋士振り飛車党のカルサバ流で有名な久保利明先生が憧れた、大野先生の日本一の捌きは必見です。
気になる方は、下記の棋譜・名局スクリーンの記事から全棋譜を読めますので是非お楽しみください。
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◆今回の記事の棋譜&棋譜再生
◇サイト上の記事で解説を読みながら鑑賞
今回のPart2で紹介した棋譜はこちらの記事でサイト上で鑑賞できます。
◎今回のPart2の棋譜 ⇒ 【名局スクリーン】まぼろしの大野・大山十番将棋 香落ち戦 1940年11月17日 木見会の一局 を並べる【大野の捌き】
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◇Youtubeで動画再生して鑑賞
この記事で解説した棋譜をYoutubeで動かして再生できます。
◇KIFファイルでダウンロードして鑑賞
さらに今回解説した記事を「kifファイル」でダウンロードできます。
▼kifファイルの再生方法▼ Androidの方は「Kifu for Android(無料版)」で再生する事ができます。 iPhoneの方は『kifu for iPone』で再生する事ができます。 |
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*季刊 将棋天国 夏 第14号* 定価:910円 |
*横歩取りは生きている―大橋柳雪から現代まで* 定価:1,200円 著:沢田多喜男 出版:将棋天国社 1981年2月発売。 江戸時代の天才棋士、大橋柳雪が書いた"宇宙間第一の珍書"「平手相懸定跡奥義」から始まった横歩取りの歴史。 そこから1981年に至るまで、プロアマ間の横歩取りの歴史・定跡を語った本。 「横歩取り△3三角打戦法」から「横歩取り△4五角戦法」は大橋柳雪が江戸時代から研究し、当事のプロ棋士をも上回る内容だった!? アマチュアで流行した「横歩取り△3三角打戦法」から、山田道美九段が研究した「横歩取り△4五角戦法」の当事の出来事・定跡について徹底解説! 山田九段、花田八段、谷川九段、宮坂九段、若島正氏、谷川俊昭氏、以下あらゆる将棋指しが大橋柳雪の「平手相懸定跡奥義」に挑むが・・・? 当事の横歩取りの背景を沢田多喜男氏がドラマティックな文章で語った名著。 「第一部 大橋柳雪」から「第二部 柳雪から現代まで」「第三部 横歩取りの起源」まで横歩取りの新手の歴史的背景を紐解いて行く。 今では有名な「△4五角戦法」の裏定跡「若島・佐々木流」の指し方・裏定跡を生んだアマチュア強豪の若島正氏、佐々木光夫氏の話についても詳しい。 しかしそれも大橋柳雪の掌の中だった・・・? プロアマの将棋指しが大橋柳雪に挑み、横歩取りを現代まで紡ぐ! 横歩取りをテーマに江戸から昭和将棋史を語った名著! 将棋の読み物としても面白く、読んでいくうちに横歩取りの思想と定跡が生まれた背景が勉強できるでしょう。 2019年現在発売されている横歩取りの定跡書で、定跡は勉強できますが、その定跡の一手が生まれた理由・考案者について詳しく書かれた本が『横歩取りは生きている』です。 |
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