"ある地点"の正体は?久夢流の『3五・3七の危険地帯』の解説。
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目次
◆"ある地点"の正体は?久夢流の『3五・3七の危険地帯』の解説。
この話は記事が長くなってしまうため、こちらの別ページで解説します。
では下記へ変化B1図を再掲載して
『間宮久夢流』が制圧したい"ある地点"の話をしましょう。
【再掲載 変化B1図は▲3五同銀まで】
ある地点とは…「3五・3七」の地点。
「間宮久夢流」が制圧したい地点…。
それは3五・3七の地点です。
◇"ある地点"とは?『相手の駒を置かせてはいけない"危険地帯"』
「3五・3七地点を制圧したい?」
どういうことだ?と思っているでしょう。
まずは先手が制圧したい地点へ色を塗った
下記の「危険地帯図」をご覧ください。
【危険地帯図】
濃色の部分が先手が制圧すべき地点。
「濃い色の地点」が、先手が絶対に制圧すべき「最優先地点。」(3五・3七)
ここには相手の駒を絶対に置かせてはいけません。(次で解説。)
「薄い色の地点」は、できるなら自分の駒を利かしておきたい「次善地点。」(3四・2四・4六・3六・2六)
特に3四・2四は、自分の歩を打てると入玉が見えくる、攻めの利かし。
4六・3六・2六は、相手に駒を打たせないようにする、守りの利かしです。
・"ある地点"とは、相手の駒を置かせてはならない"危険地帯"。『3五・3七の地点』の2カ所の事。
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△久夢流が何よりも制したい"ある地点 その1"。「"3五"地点」の解説。
というわけで、先手が制圧したい地点は「3五・3七地点」です。
…いきなりそう言われてもピンと来ないでしょう。
なのでこれより3五・3七地点を制圧すべき、その理由について詳しく解説していきます。
まずは3五地点の話から。
先手が「3五地点を制圧したい理由」を解説しましょう。
この入玉戦法『間宮久夢流』で、
先手が作りたい理想形とは「3五地点に金銀を置き、▲3四歩・▲2四歩と打った形」(下記 参考理想図)なのです。
【参考理想図は▲2四歩まで】
3五地点に金銀を置き、四段目に歩を打つ。
上記 参考理想図*のようになれば、先手は次に▲3三歩成* △同桂 ▲3四歩*から上部へと金を作って飛車を成り込んだ後に、▲3六玉~▲2五玉~▲2四玉で悠々と玉を入り込む事ができます。
広く厚い歩の壁を作り、その厚みを使って敵陣へ入る…。
それを実現するために必要なのが「3五地点の制圧」なのです。
・3五地点へ先に▲3五金(銀)と置けた方が入玉の権利を得る。
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△相手に駒を打たれると困る"ある地点 その2"。「"3七"地点」の解説。
久夢流は、この「3五地点」に自分の駒を置く必要がある事は先程の話でよくわかったはずです。
さらにもう一つ大事なのが「3七地点」です。
この3七地点に相手の駒を打たれる状況を作られると、先手が入玉するのは不可能となります。
まだピンと来ていないはずなので、下記の危険地帯侵攻図を見てください。
【危険地帯侵攻図】
3五地点も取れず、△3六歩と打たれている。
上記の図が「3五・3七を制圧できなかった最悪の状況」です。
慣れない人が久夢流を指すと、上記の局面を許してしまう事が多々あります。
上図の局面は、実際は左辺に逃げる事ができ、玉を逃げている間に後手玉を詰まして勝つ事はよくあるのですが、久夢流にとっては非常に不味い局面なのです。
さて、下記 再掲載 危険地帯侵攻図の何が不味いのか?
具体的に恐れている手を示しましょう。
【危険地帯侵攻図は▲2九飛まで】
先手が恐れている手とは?
それは…△3七金!(下記 変化C1図)と打たれる手です。
【変化C1図は△3七金まで】
ここに金を無条件で打たれるとアウト。
上記 変化C1図の△3七金は、久夢流に絶望を与える一撃です。
この上記 変化C1図*から▲4六玉*は△3八金 ▲8九飛 △3七歩成*…となり、次に△3六銀の縛りや△3五銀と上部を押さえられる手があり、先手入玉できません。
よって上記 変化C1図では▲5八玉と逃げる一手ですが、
以下△4七銀 ▲6九玉(下記 変化C失敗図)と進みます。
【変化C失敗図は▲6九玉まで】
これでもう入玉は不可能。久夢流失敗。
こうなってしまうと、先手は上部への入玉は不可能です。
ここから先手は▲7九玉~▲8八玉と逃げて相手を詰まして勝つ将棋になり、実戦だとそのまま勝てる事もよくあるのですが…。
そんな勝ち方は「入玉戦法の久夢流」にとって不本意です。
つまり…3七地点へ相手の駒(金・と金)を設置されると、先手は入玉ができなくなるのです。
「3五・3七地点」に
相手の駒を取り返せない形で置かれる状況を作ってしまうと、
敵陣へ入る事は不可能となる。
これは久夢流の鉄則なので、覚えておきましょう。
・3七地点に相手の駒を打たれると、▲5八玉~▲6九玉と引かされるため入玉不可となる。
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☆実戦での「3七地点」の守り方。『▲3七桂を跳ねてからの▲3七歩!』
この「3七地点」に相手の駒を設置させない考え方はとても大事なので、
もうしばらく解説を続けます。
下記の実戦の局面をご覧ください。
【変化D1図は66手目△2六歩まで】
後手は△2七歩成から「△3七と」が狙い。
上記 変化D1図は後手が△3六金と打って、△2六歩と打った局面。
(本記事最後に掲載した『参考棋譜3』(クリックで本記事の参考棋譜へ移動。)と似た局面。)
後手の狙いは、一例ですが上記 変化D図*から▲3四歩*だと △同銀 ▲2四と △2七歩成* ▲3四と △3七と* ▲同銀 △同金*…として、先程言った「3七地点」に後手の駒を利かして先手の入玉を封じる狙いです。
上記 変化の一例は、後手玉を攻めており、左辺への玉の逃げ道が広いが先手やれますが、後手の△3七金の存在が大きく先手は▲4七玉と上がって入玉する事ができません。
では、先手はどうすれば後手陣への入玉ルートを作る事ができるのか?
それは「3七地点」に自分の駒を打ち、
相手の駒を3七へ置かせないよう断固死守する事です。
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下記の再掲載 変化D1図から手を進めましょう。
【再掲載 変化D1図は66手目△2六歩まで】
ここから「3七地点」を死守する。
▲2五桂! △3四銀 ▲2四と △2五銀
▲3七歩!(変化D2図)≫
≫の付いた青文字↑を押すと動く盤面で再生。
【変化D2図は71手目▲3七歩まで】
3七の桂を動かし▲3七歩!必須の手筋。
3七地点に自分の駒を打ち、相手の侵攻を食い止めるための具体手順…。
それが上記の▲2五桂~▲3七歩!(上記 変化D2図)です。
この手の意味は、後手の△3六金を盤上から消した後に再び▲4七玉~▲3六歩~▲3五歩と歩を伸ばして3五地点を制圧してしまう狙いです。
相手が3六地点に金銀を打って2・3筋を制圧しようとしてきたら、この▲3七歩と打つ手は必須なので絶対に覚えておきましょう。
ちなみに上記 変化D2図*で△2七金*と入る変化は、▲2五と* △3六歩*に▲4七玉*と上がり、そこから入玉を狙う将棋となります。(詳しくは本記事の『参考棋譜3』《クリックで本記事の参考棋譜へ移動。》をご覧ください。)
他に上記 変化D2図*で△4六金*と銀を取る手は、▲同角*となり、後手は攻めの要の△3六金を失ってしまい後手失敗です。
どちらも先手ペースの将棋になるのですが、共通しているのは「先手は▲4七玉と上がるスペースを断固として用意している事」です。
さて…ここで解説を打ち切るにはまだ早く、この手筋の話はもう少しだけ続きます。
なぜなら…、この▲3七歩で3七地点を死守する作業がもう一度登場するからです。
話が長くなりますが、もうしばらくお付き合いくださいませ。
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下記へ変化D2図を再掲載して手を進めましょう。
【変化D2図は71手目▲3七歩まで】
後の展開も理解しておく必要がある。
△2七歩成 ▲3六歩 △同銀 ▲2三と
△2二歩 ▲3七歩!(変化D結果図)≫
≫の付いた青文字を押すと動く盤面で再生。↑
【変化D結果図は77手目▲3七歩まで】
またも登場!「▲3七歩」の手筋。
先手は▲3六歩~▲2三と(後手の△2七とがいなくなったら▲2二との狙い。)から、
▲3七歩!(上記 変化D結果図)と再び3七地点に歩を打ちました。
何気ない手順ですが…後手の3六の駒を金から銀に変えた事も大きく、上図から次に▲3五銀と出る手も生じています。
この上記 変化D結果図の状況を作るために、先程の変化D2図で▲3七歩!と打ったのでした。
・3七地点の守り方は、▲3七桂を跳ねてから▲3七歩の連打!
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☆「3五・3七地点」の両方を制圧できると入玉ルートが見えてくる。
さて…下記 再掲載 変化D結果図となり、ようやく先手の入玉が見えてきました。
【再掲載 D結果図は77手目▲3七歩まで】
ここで3つの変化があるが…?
最後に上記 変化D結果図の変化を見てみましょう。
上記 変化D結果図*で△3七同と*は、以下▲2二と* △4一玉 ▲2三飛成*から、次に▲3二金の攻めを狙えば、先手は入玉できませんが…後手玉が持たず先手勝ちです。
他に上記 変化D結果図*で△3七同銀成*は、これも以下▲同銀 △同と ▲2二と △4一玉 ▲2三飛成*で先手勝勢です。
どちらの変化も後に▲7二金が後手玉の逃げ道を防ぐ必殺手になり、後手持ちません。
残る上記 変化D結果図*で△2三歩*は、以下▲3六歩* △同歩 ▲2七飛 △3二金 ▲3五歩!*(下記 変化D参考図)で3筋地点を制圧した後に▲4七玉~▲3六玉で入玉する将棋になり、先手不敗の態勢です。
【変化D参考図は83手目▲3五歩まで】
見事3五地点の制圧完了!入玉が見えてきた。
…話が長くなってしまいましたが
上記 変化D参考図が「3五地点」「3七地点」の両方を制圧する事に成功した局面です。
この2つの地点を制圧した上記 局面を見てわかる通り、後手はもう先手玉を攻める事ができません。
後手に攻め駒が足りないという事もあるのですが、
なにより「3五地点に先手の歩があるので、3四に駒が打てない&△5三角が使えない」事が大きいのです。
さらに極めつけは「3七地点へ有効な駒を打てないため、先手の▲4七玉~▲3六玉を防げない」事。
この2つの地点を制圧できると、後手が先手玉を攻めるための手段が途端になくなります。
そこから広い陣形を生かし、先手玉は後手陣へ入る事ができるので、後手はもう先手玉を詰まして勝つ事が難しい将棋になっています。
そう…。
これらの「3五・3七」2つの危険ゾーンを制圧する事ができれば、瞬く間に後手陣への入玉ルートが開くのです。
・3七・3五地点の両方を制する者が入玉を制す。
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◆補足:「3五・3七地点」をたった一枚で制圧できる『魔法の駒』について。
ちなみに補足ですが、この「3五・3七地点」をたった一枚で制圧できる「魔法の駒」があります。
それが香車です。(下記 香車参考図)
【香車参考図は▲3八香まで】
たった一枚で3五・3七に利かせられる。
香車の長い利きを生かし、3五・3七地点の両方を同時に守る事ができます。
さらに後の▲3三歩成の威力も上げており、先手の入玉力を高める攻防一体の「魔法の駒」です。
もしも実戦で香車を入手できる事があれば、▲3八香と打って要の地点を一気に制圧してしまいましょう。
・香車を▲3八香と打つだけで、3五・3七地点を同時に制圧できる。
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◆久夢流『3五・3七地点』6つのポイント まとめ
1:"ある地点"とは、相手の駒を置かせてはならない"危険地帯"。『3五・3七の地点』の2カ所の事。(下図参照。)
【再掲載 危険地帯図】
この2カ所には相手の駒を置かせては駄目。
・「ポイント1:『相手の駒を置かせてはいけない"危険地帯"』」の解説へ移動。
2:3五地点へ先に▲3五金(銀)と置けた方が入玉の権利を得る。(下図参照。)
【再掲載 参考理想図は▲2四歩まで】
上図のように歩の壁を作れると入玉確定。
・「ポイント2:『久夢流が制したい"ある地点 その1"。』」の解説へ移動。
3:3七地点に相手の駒を打たれると、▲5八玉~▲6九玉と引かされるため入玉不可となる。(下図参照。)
【再掲載 変化C1図は△3七金まで】
△3七金と打たれると入玉不可となる。
・「ポイント3:『相手に駒を打たれると困る"ある地点 その2"。』」の解説へ移動。
4:3七地点の守り方は、▲3七桂を跳ねてから▲3七歩の連打!(下図参照。)
【再掲載 変化D2図は71手目▲3七歩まで】
3七は断固死守!▲3六歩~▲3五歩も狙い。
・「ポイント4:『実戦での"3七地点"の守り方。』」の解説へ移動。
5:3七・3五地点の両方を制する者が入玉を制す。(下図参照。)
【再掲載 変化D参考図は83手目▲3五歩まで】
3五・3七を先手が取り、入玉が見えてきた。
・「ポイント5:『両方を制圧できると入玉が見えてくる。』」の解説へ移動。
6:香車を▲3八香と打つだけで、3五・3七地点を同時に制圧できる。(下図参照。)
【再掲載 香車参考図は▲3八香まで】
たった一手で3五・3七を守れる駒が香。
…以上が、間宮久夢流の"制圧したいある地点"「3五・3七の危険地帯」の解説でした。
危険地帯を制圧した途端、今まで地獄のようだった右辺の空間が突如天国へと変わる…。
ピンチとチャンスが表裏一体の地点、そこを奪い取る事が本戦法の要なのです。(下記 再掲載 危険地帯図参照。)
【再掲載 危険地帯図】
この危険ゾーンを奪い取る事を意識しよう。
・先手は3五地点・3七地点を制圧し、相手の駒をこの地点へ置かせないようにする。
◆『間宮久夢流』中終盤編の解説記事へ戻る
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