こんな銀立ち陣への組み方が!? 「四間飛車から銀立ち陣へ大変身!」 実戦譜解説


◆振り飛車から銀立ち陣で作戦勝ち!?

今回は私の友人の将棋を紹介します。
独特な棋風の持ち主で、奇抜な手を指す事で一部で有名な人です。
久々に彼の将棋を観戦しました。

今回の将棋もその1つ

 

ではどうぞ、局面をご覧ください。 (第1図)

【第1図は15手目▲7六銀まで】
▲7七桂+▲7六銀型の"変則振り飛車"?

この将棋、先手の出だしは一見変則振り飛車
右辺に玉を囲い「▲7八金~▲6五歩を狙う」のかなと思っていました。

それが数十手後にこうなりました。(ハイライト図)

【ハイライト図】
銀立ち陣VS銀立ち矢倉 "相居飛車"の形!?

 

 

 

 

振り飛車対居飛車の対抗形かと思っていたら

何故か相居飛車になってる・・・。

しかもハイライト図は先手作戦勝ちです。

 

 


◇Q.どうして先手が作戦勝ち?

【再掲載 ハイライト図】
この局面が何故先手作戦勝ち?

ハイライト図が先手作戦勝ちである理由を説明していきましょう。

◆先手陣の主張点

1.左辺が「銀立ち陣」で上部に厚く浮き駒がない。

2.右辺の飛車角桂銀が全部攻めに働いている。

3.先手の9~6筋の左辺玉頭でしばらく戦いが起こらない。

 

◆後手陣の不満点

1.後手は△4一金が浮き駒 これでは激しい戦いは起こせません。

2.後手は△7四歩が突けない為、△8一桂の活用ができそうになく、攻め駒がない。

3.6筋の飛車1枚では、後手からの攻めがない。

4.さらに、1筋~4筋の後手玉頭で戦いを起こされたのが嫌な所。

【再掲載 ハイライト図】
玉が堅く仕掛けの権利あり。 先手作戦勝ち。

よってハイライト図は先手の作戦勝ちなのです。
ですが、一体どうしてこうなったのでしょうか?

 
 
 


◆(15手目)実戦の進行は…▲5七銀右型振り飛車?

では第1図(再掲載)から実戦譜を並べて解説しましょう。

【再掲載 第1図は15手目▲7六銀まで】
先手はどうやって居飛車に変身したのか?

・再掲載 第1図からの指し手

△5一金右 ▲5六歩 △4二銀 ▲4八銀

△6二飛    ▲5七銀  △1四歩 ▲7八金

△1五歩    ▲9六歩  △9四歩 (第2図)

【第2図は26手目△9四歩まで】
▲5七銀右型振り飛車? 6筋を厚くした?

後手は変則船囲い(△5一金右~△4二銀型)に囲います。

この△5一金右~△4二銀型変則船囲い右四間飛車は、『東大将棋ブックス 四間飛車道場16巻』に載っています。
横に堅く、何度か指した事がありますが有力な型です。

 

*四間飛車道場〈第16巻〉右四間飛車 (東大将棋ブックス)* 定価:1,260円
著:所司 和晴 2004年4月発売。 『舟囲い▲5九金右型』から、『腰掛け銀▲6六歩型』までマニアックな右四間飛車も解説。

『四間飛車道場〈第16巻〉右四間飛車 』(東大将棋ブックス) の商品レビューを読む。


◇(26手目)▲6九玉から左に囲った!? 振り飛車じゃないの?

【再掲載 第2図は26手目△9四歩まで】
左辺に駒が固まっている。珍しい先手陣。

先手は▲5六歩~▲4八銀~▲5七銀から右銀を繰り出しました。

少し変わった手順かと思いましたが
「6筋を厚く備えた、二枚銀振り飛車なのか?」とぐらいに思っていました。

続く▲7八金~▲9六歩▲6五歩の仕掛けを見ているのだろうなぁとばかり

 

ここから先手の珍妙な大構想が始まります。

第2図再掲載。

【再掲載 第2図は26手目△9四歩まで】
ここから振り飛車側はどう囲う?

・再掲載 第2図からの指し手

▲6九玉! △8四歩 ▲8六歩 △9三香

▲7九玉    △9二飛  ▲8七金 (第3図)

【第3図は33手目▲8七金まで】
左に玉を囲った!?

何を思ったか、先手は▲6九玉左に玉を動かしました。

後手は△9三香~△9二飛と9筋を狙います。(このあたり後手は右四間飛車の攻めが狙いにくく、手に困っている。)
ですが先手は▲8七金(第3図)でピッタリ端が受かっています。  後手は右の△8一桂が使えないのが響いているようです。

少しづつ先手の構想が見えてきました。

 

 


◇(33手目)変則四間飛車の先手。 突如ガラ空きの2筋を突く。

第3図再掲載。

【再掲載 第3図は33手目▲8七金まで】
左辺の形は見えてきたが、右辺はどうする?

・再掲載 第3図以下の指し手

△6二飛 ▲8九玉 △5二金直 ▲2六歩(第4図)

【第4図は37手目▲2六歩まで】
▲8九玉と囲ったが。▲2六歩とは?

後手は△6二飛と飛車を戻します。 これでは△9二飛と指した手が損になってしまいました。
このあたりは30秒早指し将棋なので、粗があるのは仕方ありません。

むしろ先手が▲8八角をどう使うか気になっていました。
そこで先手は▲8九玉から▲2六歩(第4図)と伸ばします。
一体何がしたいのでしょうか?

対する後手の△5二金直~△4四歩は、上部に厚い形に組み替えようという構想。
この序盤戦はお互いの構想力勝負が中心のようです。

ここからの駒組みは見ものです。

 

 


◇(37手目)振り飛車側は突然右辺の駒を使う。 一体どういう構想?

第4図(再掲載)からどうなるのか?

【再掲載 第4図は37手目▲2六歩まで】
お互いどう駒組みを進めるのか?

・再掲載 第4図以下の指し手

△4四歩 ▲4六歩 △4三銀上 ▲3六歩

△3三角 ▲3七桂 (第5図)

【第5図は43手目▲3七桂まで】
先手は右桂を跳ねたが、いびつな陣形。

後手の△4四歩に対し、先手が▲4六歩と突き返すのが大事な手。
後手に△4五歩と位を取らせない細かい手です。

将棋の序盤戦は片方に位を取られると、その下に金銀を送り出すだけで駒の働きの差が一気に現れます。
序盤の位取り拒否は、簡単に作戦負けしない為にも大事なのです。
指し回しは大胆ですが、こういう細かい所はしっかりしています。

先手の▲3六歩~▲3七桂(第5図)は、後手の△4五歩完全に消した手。
後手の3・4筋位取りを良いタイミングで消しています。
ここ数手の先手は位を取らせないという基本をキッチリ守っています。

 

この将棋は戦いが起こるまで時間がかかっていますが、起こるまでのお互いの駒組みのセンスが出ています。
純粋なお互いの序盤力が試される将棋に、見ているこちらもワクワクしてきます。

 

 


◇(43手目)右桂と右金を活用していく先手。 後手は左美濃に変身。

果たして第5図(再掲載)から、お互いどう進めるのか?

【再掲載 第5図は43手目▲3七桂まで】
ここから先手陣が段々正体を現す。

・再掲載 第5図以下の指し手

△2二玉 ▲5八金 △3二銀 ▲6七金

△2四歩 (第6図)

【第6図は48手目△2四歩まで】
後手は巧みに左美濃に組み替える。

第5図から▲5八金~▲6七金。
右金を左辺に寄せていきます。

一方後手は△4三銀型から△3二銀と引き、「左美濃囲い」に組み替えます。
後手も力戦の手将棋ながら、囲いを堅く組み替える技術を見せます。

先手の狙っている形が、48手目(第6図)に来てようやく見えてきました。
次の一手で先手が序盤から狙っていた構想の正体がわかります!

 

 


◇(48手目)先手の狙いは「陽動居飛車 銀立ち陣戦法」!? 

第6図再掲載。

【再掲載 第6図は48手目△2四歩まで】
次の一手で先手陣が正体を現す。

・再掲載 第6図からの指し手

▲2八飛!(第7図)

【第7図は49手目▲2八飛まで】
先手は居飛車にするのが狙い!

▲2八飛(第7図)となり、先手が序盤から狙っていた構想が姿を見せました。
そうです! 振り飛車と見せかけて居飛車に戻す、「陽動居飛車」が狙いだったのです。

そして先手の囲いは「銀立ち陣囲い」という上部に厚い形になっています。

 

 


△Q.「銀立ち陣囲い」ってどんな囲い? 

ちなみに「銀立ち陣囲い」とはどんな囲いなのでしょうか?
現代将棋ファンには、知らない方も多い囲いだと思います。

 

下の銀立ち陣囲い図をご覧ください。

【銀立ち陣囲い図】
上部に厚い対居飛車用の囲い。

見ての通り、上部を金銀三枚で固めています。
▲7六銀型・▲8七金型が厚く、上に対しては矢倉よりも堅い囲いです。

この銀立ち陣囲いは、『将棋・B級戦法の達人』と言う本で紹介されています。
相居飛車の角換わり定跡で、昭和の一部プロ棋士が愛用した囲いです。

*将棋・B級戦法の達人&金言角言新角言* 定価:1,364円

著:週刊将棋 (編集) 2016年4月27日発売。 あらゆるB級戦法について解説されている本。 今や『A級戦法』の「平美濃返し」「逆襲!変幻飛車」(角交換四間)について1997年にいちはやく書いた本。 「ポンポン桂」の成否条件や「宗歩四間」の居飛車穴熊対策にも詳しい。 今回紹介した「難攻不落銀立ち陣」は、2019年現在もこの本でしか扱っていない。 格言書としての良著『金言玉言新角言』も一冊丸ごと掲載されている。

『将棋・B級戦法の達人 (マイナビ将棋文庫)』の商品レビューを読む。

 

 



◇(49手目)「銀立ち陣囲い」の外壁が完成! 対する後手は上部をどう守る?

話が横にそれましたが、第7図再掲載。

【再掲載 第7図は49手目▲2八飛まで】
よく見ると後手の2筋が弱い形。

こう進んでみると、後手の玉頭である2筋が弱い形です。
△3二銀型の左美濃では、とても上部を受けきれそうにありません。
囲いの堅さの差も歴然で、先手作戦勝ち模様です。

さて後手は▲2八飛(再掲載 第7図)に、実戦でどう指したのでしょうか?

【再掲載 第7図は49手目▲2八飛まで】
後手は玉頭を守らなければならない。

・再掲載 第7図からの指し手

△2三銀(第8図)

【第8図は50手目△2三銀まで】
△2三銀と守る。ここから局面が動く。

後手は一先ず玉頭を守る△2三銀(第8図)です。
こう指さないと、次の▲2五歩にとても耐え切れそうにありません。

第8図、それでも先手はここを仕掛け時と見て一気に動きます。

先手側にはもう一つ大事な狙いがあり、それを仕掛けながら達成していきます。
それは先手の▲5七銀を攻めに使うという事です。
果たしてどのように▲5七銀を使っていくのでしょうか?

 

 


◇(50手目)ついに先手が戦いを起こした! ▲5五歩は面白い仕掛け。

第8図再掲載します。

【再掲載 第8図は50手目△2三銀まで】
先手はここから巧みに仕掛ける。

・再掲載 第8図からの指し手

▲2五歩 △同歩 ▲5五歩(第9図)

【第9図は53手目▲5五歩まで】
▲5五歩が面白い一手。この手の意味は?

後手の△2三銀の瞬間、先手は▲2五歩から動きます!
この瞬間に戦いが起これば、後手の△4一金が浮いたままと考えたのです。
浮き駒があるうちに仕掛ける。 これは将棋の大事な基本です。

△2五同歩と突き捨ててから、▲5五歩(第9図)面白い手。
△同銀と取れば▲2五飛の十字飛車△5五銀が助らず先手十分です。

(局後の感想戦では第9図▲5五歩と指さず、単に▲2五同飛△2四歩▲2六飛で次に▲5五歩を狙う方が勝ったとの事。 ですが、これはもう些細な話です。)

 

 


◇(53手目)先手は▲5七銀→▲4七銀と「銀を真横に使う手筋」を見せる!

本譜の▲5五歩(再掲載 第9図)はなかなかの手筋。
先手は5筋の歩を伸ばしつつ、▲5七銀を働かせる狙いの一手なのです。

【再掲載 第9図は53手目▲5五歩まで】
ここから先手は銀をどう使うのか?

・再掲載 第9図からの指し手

△4三銀 ▲5六銀 △2四角 ▲7九角

△3五歩 ▲4七銀(第10図)

【第10図は59手目▲4七銀まで】
▲5七銀→▲4七銀と銀を横に持ってきた。

後手は▲5五歩を取れないので△4三銀と引く一手です。
以下後手の△2四角の揺さぶりに▲7九角と引き、気になっていた先手の角もこれで使えました。
序盤の▲8九玉は▲7九角の引き角の活用を用意した手だったのです。

そして後手の△3五歩の突き出しに▲4七銀と引き、なんと5七の銀▲4七銀(第10図)真横に動きました!

 

冒頭で紹介した、ハイライト図へ段々近づいてきましたね。

 

 


◇(59手目)ついに「銀立ち陣囲い」完成! これにて先手作戦勝ち!

銀立ち陣戦法への完成形が見えてきました。
ここからあと一手で先手の「銀立ち陣囲い」が完成します。

第10図再掲載します。

【再掲載 第10図は59手目▲4七銀まで】
ここから"銀立ち陣囲い"にする仕上げの一手は?

・再掲載 第10図からの指し手

△3四銀右 ▲7八玉! △3三桂(再掲載 ハイライト図)

【再掲載 ハイライト図】
こうなれば"先手銀立ち陣囲い"作戦勝ち。

先手は待望の▲7八玉の入城で銀立ち陣囲い」の完成。 対して△3三桂(再掲載 ハイライト図)と力を溜める後手。
これで冒頭で示した、ハイライト図
になりました。

こうして先手は作戦勝ちしたのです。

振り飛車一本や居飛車一本の人には、中々できない構想で、見ていてとても面白かったです。
先手の人は本来、力戦居飛車党で「特にこれといった型を持たない」らしい指し回しです。(元々振り飛車が苦手らしいので、どう指すか気になっていました。)

ですがこの後、先手はとんでもない大ポカをやらかして作戦勝ち一気に敗勢にしてしまうのでした・・・!

 

 


◇(62手目)信じられない大ポカ!? 「 銀立ち陣囲い」は飛車の打ち込みに弱いので注意!

ハイライト図再掲載。

【再掲載 ハイライト図】
ここから先手はどう攻めを組み立てるか?

・再掲載 ハイライト図からの指し手

▲3五歩 △同角 ▲3六銀 △2六角(第11図)

【第11図は66手目△2六角まで
△2六角と出てきた。 どう対応するべきか?

先手の▲3六銀~▲3七桂型居飛車の理想形と言われる形です。
4筋・3筋・2筋・1筋のどこからでも銀桂で攻める事ができますね。

再掲載 ハイライト図から先手の▲3五歩に対し△同角の所、代えて△同銀▲2五桂 △同桂 ▲同飛で、先手攻めの桂と後手守りの桂交換で先手十分です。

そして△2六角(再掲載 第11図)と出た局面。

【再掲載 第11図は66手目△2六角まで
▲3八飛~▲2七歩で良かったが・・・。

△2六角に先手は▲3八飛と受けて、次に▲2七歩と角殺しの筋を見せれば良かったのですが・・・。

何を血迷ったか、先手は再掲載 第11図▲2六飛飛車角交換をしてしまいました。
銀立ち陣は飛車を渡すと一溜りも無く崩れてしまうので、この手はご法度なのです。

実戦もその通り、少し進んだ後に△2八飛(終盤図)一撃で終わってしまいました。

【終盤図は76手目△2八飛まで】
横に弱い銀立ち陣は、飛車を打たれると壊滅的。

終盤図以下▲8九玉△3六歩と銀を取られ、次の△7八銀が厳しく先手とても持ちません。

序盤の構想は面白かっただけに、この大ポカは残念でした。

局後に「悪魔が乗り移った」と本人はコメントしていました。
角を見ると発作的に取ってしまう癖が出たようです・・・。

 


 

▼kifファイルの再生方法。
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◆「陽動振り飛車銀立ち陣」 まとめ

1.銀立ち陣は組めれば上部に手厚く入玉しやすい強い囲い。

2.組むまでに工夫がいるので▲7六銀型を作った時にやってみるといいかも?

3.組んだ後は絶対に飛車を相手に渡さない。

 


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