棋書『B級戦法の達人』は「A級戦法の達人」? Part2 ~「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」編~

本ページはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を利用しています。


スポンサーリンク


 


《「棋書『B級戦法の達人』」 全記事一覧へ移動する。》

<Part3の記事へ移動する。
Part1の記事へ移動する。>


◆棋書『B級戦法の達人』は「A級戦法の達人」? Part2

前回は「平美濃返し」から「飯島流引き角戦法」への進化について熱く語りました。



今回は『B級戦法の達人』で、もう一つ「A級戦法」に進化した戦法があります。
 
前回は居飛車の戦法でしたが、今回は振り飛車党必見! あの戦法が登場します!

あの「B級戦法」が、タイトル戦にまで登場する「A級戦法」に!?
誰がその戦法を進化させたのか?

 

さぁ、さっそく見て行きましょう!

 

 


◇「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」へ。

「逆襲!変幻飛車」

いかにもB級臭のする名前ですが、どんな戦法か局面図を見せます。

最近の将棋に詳しい方なら一目でピンと来るかもしれません。

 

これが逆襲!変幻飛車」の完成図です。

【B級戦法の達人 逆襲!変幻飛車完成図】
次に▲8六歩からの"逆棒銀"が狙い。

上の図から▲8六歩 △同歩 ▲同銀 がこの戦法の攻め筋です。

自分から角交換をして手損。
そして角交換に弱いはずの振り飛車に構える。
さらに8筋から棒銀で仕掛ける!

この本が発表されたのは1997年。
その当事は「筋悪でB級戦法の代名詞のような戦法」と評価を受けていました。

ですが、この戦法どこかで見た事がありませんか?
最近の将棋に詳しい方なら、一目でお分かりでしょう。

 

そう、2019年の今も流行している「角交換四間飛車」です!
今やタイトル戦でも登場した、あの角交換四間飛車」が20年以上前に「B級戦法」として書かれていたのです。

今の将棋ファンの方には、にわかに信じられない話かもしれません。

 

 


△藤井猛先生の手により「角交換四間飛車」へと進化!

そして皆さんご存知でしょうが、「角交換四間飛車」は2012年の第53期王位戦で藤井猛先生が採用し、羽生善治王位(当事)相手に勝利を飾り「A級級法」となりました。

◆今回の棋士紹介◆

●藤井猛 棋士データベース ←クリックでリンク先へ飛ぶ。

日本将棋連盟 ホームページ より。

 

時は2011年。 「藤井システム」「藤井矢倉」から離れた、藤井猛先生が次に目をつけたのが「角交換四間飛車」です。

居飛車穴熊が猛威を振るっている現代将棋界では、いかに居飛車穴熊を封じるかが振り飛車党の命題です。
そこで早期に▲2二角成と角交換をする事で△2二同銀と指させ、居飛車穴熊を根本的に封じます。
それでも居飛車側が無理に穴熊に組むと、陣形が偏って角を打ち込まれる隙が生じます。

一方振り飛車側は駒組みに注意しておけば、角を打たれる心配はありません。
さらに振り飛車側には美濃囲い・穴熊囲いの選択権があります。

駒組み・タイミング・他の振り飛車との組み合わせ。
これらをロジカルに再構築してタイトル戦(2012年 藤井猛 対 羽生 実戦図)に登場させたのが、藤井猛先生の功績なのです。

【2012年 藤井猛 対 羽生 実戦図】
第53期王位戦で登場。 羽生王位相手に勝利!

・2012年 王位戦 藤井猛 対 羽生 ←クリックで再生。

この将棋は是非、盤で並べてみてください。 角交換四間飛車の名局です。

 

もう「角交換四間飛車はB級戦法!」と言う人はいなくなりました。
それほどまでに藤井猛先生が研究を深め、プロの実戦で多く採用したのです。

この戦法の指し方は『角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)』で紹介されています。

 

本家藤井猛先生が語る"本当の基本"が今ここに。

*角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)* 定価:1,540円

著:藤井 猛 2014年7月1日発売。 『角交換四間飛車の本家』が語る本当の基本。 著者の藤井猛九段は、2012年度の第53期王位戦七番勝負で『角交換四間飛車』を引っさげ、羽生善治王位へと挑み『角交換四間飛車』で二局目を快勝! さらに第40回升田幸三賞を受賞! 2019年以降もプロアマの振り飛車界を支える戦法だ。 次の一手形式で読み進めるタイプの本なので、盤面が追いきれない初級者の方にも読みやすい『最初の一冊』。 角交換四間飛車の基本的な攻め筋・受け方はこの本を読めば自然と覚えられる。

『角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)

藤井猛先生が連採。独自の新手を加え、2013年度の第40回「升田幸三賞」を受賞しました。
今やプロアマで愛される「A級戦法」となったのです。

 


スポンサーリンク


 


△「逆襲!変幻飛車」の当事の定跡手順は荒削りだった。 20年前の手順を並べてみる。

違いを見比べるため、『B級戦法の達人』の「逆襲!変幻飛車」組み上がり図まで、初手から並べてみましょう。
当事はどのような手順で紹介されていたのでしょうか?

・初手からの指し手

▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同銀

▲8八銀 △3三銀 ▲7七銀  △8四歩

▲6八飛 (逆襲!変幻飛車1図)

【逆襲!変幻飛車1図は9手目▲6八飛まで】
当事は荒削りな手順だった。

現代の「角交換四間飛車」と違うのは、3手目▲2二角成の角交換から▲8八銀~▲7七銀という手順です。

毎度同じ形に組みたいため、3手目角交換はアマチュア的には絶対手だったのです。

後手の△4五角を防ぐための▲6八飛の途中下車も「角交換四間飛車」と同じですね。

・逆襲!変幻飛車1図からの指し手

△8五歩     ▲4八玉 △6二銀 ▲3八玉

△4二玉     ▲2八玉 △3二玉 ▲3八銀

△5二金左 ▲8八飛 (逆襲!変幻飛車完成図)

【逆襲!変幻飛車完成図は19手目▲8八飛まで】
美濃に囲って向かい飛車! 今やお馴染みの手順。

以下の手順・駒組み・攻め筋は、現代の「角交換四間飛車」と全く同じで「美濃に囲ってから8筋を逆棒銀で攻める」というお馴染みの内容です。

他の変化手順として、▲6六銀~▲7七桂と力を溜める手順も書いています。 この手順も現代の「角交換四間飛車」では定跡手順ですね。

実は大きな基本は、20年前とほとんど変わっていないのです。

 

 


△20年後「角交換四間飛車」として採用された時の違いは?

ただしプロで採用されるにあたり、3手目▲2二角成からの角交換が無駄な手と判断。
初手から ▲7六歩 △3四歩 ▲6八飛(角交換四間飛車基本図) が、プロ棋士の辿りついた「A級手順」です。

【角交換四間飛車基本図】
3手目▲6八飛が無駄のない「A級手順」

角交換を保留する事で、場合によっては▲6六歩からノーマル四間へ戻したり、▲7五歩~▲7八飛の石田流への組み換えを含みが生じています。

振り飛車側に手を変える余地が多くなっているのがお分かりでしょうか。

 

これが「逆襲!変幻飛車!」から進化した「角交換四間飛車」の具体的な違いでした。

 

 


△「角交換四間飛車」 プロの実戦例

それでは「角交換四間飛車」の実戦譜を紹介します。
タイトル戦でも登場した「A級戦法」の実戦譜をとくとご覧あれ。

1.2003年 王位戦 三浦 対 植山 ←クリックで再生
プロでの「角交換四間飛車」の1号局。

2.2011年 順位戦 藤井猛 対 井上 ←クリックで再生。
"毎度、井上慶太先生には気の毒だが" 「藤井流角交換四間飛車」の一号局。
居飛車の8筋逆襲を綺麗に逆用する、藤井流の研究手順で快勝!

3.2012年 王位戦 藤井猛 対 羽生 ←クリックで再生。
タイトル戦で登場した「角交換四間飛車」!
新手筋▲7九金からの向かい飛車で羽生善治王位相手に快勝!

実戦例を見てわかる通り、プロでは含みを持たせるためにすぐに角交換せずに▲6八飛(△4二飛)と様子を見る手がほとんどです。
こうしてプロ棋界で「角交換四間飛車」は猛威を振るいます。

 


スポンサーリンク


 


◆「逆襲!変幻飛車&角交換四間飛車」まとめ 2つの戦法の違いは?

では最後に「逆襲!変幻飛車」と「角交換四間飛車」の違いは何なのかまとめておきましょう。

先ほども書きましたが、まとめるとこの通りです。

●「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」で進化した部分。

1.3手目▲2二角成とせず、3手目▲6八飛と振るのが「角交換四間飛車」。

2.居飛車側の駒組みを見て、振り飛車側は穴熊囲いに組む可能性も視野に入れている。

3.居飛車の出方次第で、四間飛車のまま戦ったり、早石田への組み換えも考えている。

特に3番の「四間飛車のまま戦う手順の定跡化。 早石田への組み換えの定跡化。」
これが藤井猛先生の一番の功績と言われています。

 

今後もA級戦法「角交換四間飛車」が指され続ける事でしょう。

 

 


◆~次回予告~ 「端美濃囲い」から「串カツ囲い」編!

次回! 「端美濃囲い」から「串カツ囲い」編!

アマチュアが愛用していた居飛車のB級戦法「端美濃囲い」(端美濃囲い図)。

【端美濃囲い図】
▲9八玉型の美濃に囲っている?

この「端美濃囲い」を対四間飛車 藤井システム対策として、「序盤のエジソン」と呼ばれるあの男が、プロの実戦へ投入したのであった・・・。

 


スポンサーリンク


 


◇次回の記事 「端美濃囲い」から「串カツ囲い」編!



 

 


▽関連商品

*将棋・B級戦法の達人 (マイナビ将棋文庫) * 定価:1,364円
週刊将棋 (編集) 2016年4月27日発売。 『B級戦法』について紹介&解説している本。 今ではメジャー戦法になった「平美濃返し(飯島流引き角戦法)」や「逆襲!変幻飛車(角交換四間飛車)」が最初に解説された本。 他にも「端美濃囲い(串カツ囲い)」はプロでも何度か出現した戦法。 紹介されている戦法はどれも攻めッ気バツグンで、アマチュアの人にはどの戦法も魅力的。 格言書の良著『金言玉言新角言』も文庫化の際に一緒に収録されている。 見開き2Pで1つの格言を紹介している。 注目の格言は「玉の近くを攻めろ」「角は4六から打て」「割り角に好手あり」「たたくより垂らせ」など。 他の格言も是非覚えておきたいものばかりなので、是非手に取って欲しい。

『将棋・B級戦法の達人 (マイナビ将棋文庫)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)

*角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)* 定価:1,540円

著:藤井 猛 2014年7月1日発売。 『角交換四間飛車の本家』が語る本当の基本。 著者の藤井猛九段は、2012年度の第53期王位戦七番勝負で『角交換四間飛車』を引っさげ、羽生善治王位へと挑み『角交換四間飛車』で二局目を快勝! さらに第40回升田幸三賞を受賞! 2019年以降もプロアマの振り飛車界を支える戦法だ。 次の一手形式で読み進めるタイプの本なので、盤面が追いきれない初級者の方にも読みやすい『最初の一冊』。 角交換四間飛車の基本的な攻め筋・受け方はこの本を読めば自然と覚えられる。

『角交換四間飛車を指しこなす本 (最強将棋21)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)


#この記事のQRコード

QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。

 


スポンサーリンク


 

Comments are closed.