棋書『B級戦法の達人』は「A級戦法の達人」? Part1 ~「平美濃返し」から「飯島流引き角戦法」編~

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◆棋書『B級戦法の達人』は「A級戦法の達人」? Part1

私は将棋の「B級戦法」が大好きです。
「B級戦法」とはプロではあまり指されないマイナー戦法の事です。

 

ちなみに「B級戦法」とよく比べられる「奇襲戦法」は正しく対応されると不利になるハメ手戦法の事。
「B級戦法」は正しく対応されても互角、そこまで不利にならない というのが「奇襲戦法」との違い。

 

私も将棋初心者の当時、色々なB級戦法、奇襲戦法に手を出しました。
「一間飛車」や「端角中飛車」など、あらゆる奇襲戦法を覚えてみたり・・・。

将棋指しがよく通る奇襲マイブームの時期です。

 
 
そんな奇襲マイブームの時に出会ったもう一冊の本が今回のテーマとなる本です。
『B級戦法の達人』と言う本です!

*将棋・B級戦法の達人 (マイナビ将棋文庫)* 定価:1,364円
週刊将棋 (編集) 2016年4月27日発売。 『B級戦法』について紹介&解説している本。 今ではメジャー戦法になった「平美濃返し(飯島流引き角戦法)」や「逆襲!変幻飛車(角交換四間飛車)」が最初に解説された本。 他にも「端美濃囲い(串カツ囲い)」はプロでも何度か出現した戦法。 紹介されている戦法はどれも攻めッ気バツグンで、アマチュアの人にはどの戦法も魅力的。 格言書の良著『金言玉言新角言』も文庫化の際に一緒に収録されている。 見開き2Pで1つの格言を紹介している。 注目の格言は「玉の近くを攻めろ」「角は4六から打て」「割り角に好手あり」「たたくより垂らせ」など。 他の格言も是非覚えておきたいものばかりなので、是非手に取って欲しい。

『将棋・B級戦法の達人 (マイナビ将棋文庫)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)


この本、面白い戦法が沢山載っています。
載っている戦法もユニークな物ばかりですが、実はとんでもない棋書なのです。

どういう事かって?

 

「後のA級戦法が沢山載っている」からです!

 

 


 


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◆『B級戦法の達人』から「A級戦法」になった戦法紹介!

と言うわけで、今回はこの本について語ります。
実は恐ろしく先見の明がある本で、まずは載っている戦法をご覧ください。

 

初期版(1997年)が出た時のラインナップがこれです。

第1章 対振り飛車のB級戦法

  平美濃返し / 右四間端棒銀 / 鳥刺しモドキ / ポンポン桂 / 端美濃囲い

・第2章 振り飛車のB級戦法

  偽装宗歩四間 / 逆襲!変幻飛車

・第3章 相居飛車のB級戦法

  矢倉崩し左美濃中飛車 / 難攻不落銀立ち陣 / 最短!ノーガード戦法

今回この本を紹介した理由は、太字の戦法についてです。
当時は「B級戦法」と呼ばれていた物で、到底プロでは使われる事はないと思われていた、これらの戦法。

「平美濃返し」と「逆襲!変幻飛車」
この戦法達はなんと、今ではプロの将棋で大活躍しています。

 

もしかしたら、この記事を読んでいる方も既にご存知かもしれませんね。
ではさっそく、どんな戦法か紹介していきましょう。

 

 


◇「平美濃返し」から「飯島流引き角戦法」へ。

「平美濃返し」は対振り飛車用の居飛車の戦法です。

まずは図をご覧ください。

【B級戦法の達人 平美濃返し図】
"平美濃返し"完成図。左平美濃が堅い。

『B級戦法の達人』から局面図を引用したのが、上の【B級戦法の達人 平美濃返し図】です。
この「平美濃返し」は対振り飛車用の作戦。

 

▲7六歩と突かず、▲7八銀~▲7九角~▲5七角と角を動かし、▲6八玉~▲7九玉~▲8八玉、と角道を止めた左美濃にするのが「平美濃返し」の狙いです。

 

発表された1997年時点では、天守閣美濃や居飛車穴熊があるためプロ棋界では見向きもされない戦法でした。

ですが2004年になって事情が変わり、この戦法がプロで採用されるようになります。

 

 


△「ゴキゲン中飛車」が「飯島流引き角戦法」を生んだ!

その理由は「ゴキゲン中飛車」が登場したからです。
「ゴキゲン中飛車」の登場により、プロの居飛車党は苦境に立たされていました。(2004年 山崎 対 鈴木大 実戦図)

【2004年 山崎 対 鈴木大 実戦図】
2004年の将棋。 居飛車は急戦しかなかった。

・2004年 朝日オープン 山崎 対 鈴木大 ←クリックで再生。

2004年当事のゴキゲン中飛車には、居飛車側が持久戦に組んで有利になる定跡が確立されていませんでした。

今では有名な「一直線穴熊」や「超速▲3七銀」は影も形もありません。(「丸山ワクチン」という持久戦策はあったが、難解だった。)

他にあったのは12手目から大乱戦になる「▲5八金右超急戦」ぐらいでしたが、これは過激すぎて嫌う棋士もいました。

 

上の図のように「二枚銀急戦」で挑むのが、まだ居飛車の中では玉が堅い将棋でした。

居飛車がガッチリ堅くしてから仕掛ける!という将棋はなかったのです。

 

 


△飯島栄治先生が「飯島流引き角戦法」へと進化!

そこに現れたのが飯島栄治先生。

◆今回の棋士紹介◆

●飯島栄治 棋士データベース ←クリックでリンク先へ飛ぶ。

日本将棋連盟 ホームページ より。

 

2004年のプロ将棋界では「ゴキゲン中飛車」「藤井システム」が猛威を振るっていました。
どちらの戦法にも、居飛車は急戦を中心とした将棋がほとんどだったのです。
特に持久戦を得意にしている棋士には、どちらの振り飛車も難敵でした。

「ゴキゲン中飛車と藤井システムに堅い囲いで戦える戦法があれば・・・」

これが当事の居飛車党の願いでした。

 

 

だが、そんな都合のいい戦法があるだろうか・・・?

 

 

飯島栄治先生は考えてみました。
「平美濃返し」を使えば「ゴキゲン中飛車」と「藤井システム」相手に堅く囲って戦えるのではないか? と。

さっそく「平美濃返し」を改良し、ゴキゲン中飛車にも通用する「飯島流引き角戦法」に進化させ、プロの将棋で採用しました。

 

 

 

その結果は・・・。

 

 

 

見事「ゴキゲン中飛車に通用する持久戦策」(2004年 中田功 対 飯島 実戦図) として成功し、勝利を収めたのです!

【2004年 中田功 対 飯島 実戦図】
対ゴキゲン中飛車で持久戦に組めたのが大きい。

・2004年 王位戦 中田功 対 飯島 ←クリックで再生。

その飯島栄治先生の将棋を見た、他のプロ棋士も「飯島流引き角戦法」を使うようになりました。(下記実戦例参照)

凄いですよね、たった一人の研究で「B級戦法」「プロで通用するA級戦法」に進化させたのです。

 

 


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△2006年 書籍『飯島流引き角戦法』の発売でプロ棋界で指されるように

この戦法は『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法 (マイナビ将棋文庫)』という本で、本家の飯島栄治先生が詳しく解説しています。

 

*対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法 (マイナビ将棋文庫)* 定価:1,364円

著:飯島 栄治 2017年7月27日発売。 2006年に発売した『飯島流引き角戦法』と、2009年に発売した『新・飯島流引き角戦法』の2冊を合わせて文庫化。 B級戦法「平美濃返し」が飯島栄治先生の手によってメジャー戦法に! 対振り飛車戦で”角道が開いていない左美濃で戦える”ので安心! 「対四間飛車」「対向かい飛車」「対ゴキゲン中飛車」「対先手三間飛車」を「飯島流引き角戦法」で破れ!

『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法 (マイナビ将棋文庫)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)

「飯島流引き角戦法」は後手番で使う戦法ですが、先手番でも工夫をする事で「先手引き角戦法」を使う方法が解説されています。

 

『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法』は、2006年に発売した『飯島流引き角戦法』と、2009年に発売した『新・飯島流引き角戦法』の二冊が一冊になった文庫本です。

今後この戦法を覚えたい方は『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法』を買えば購入漏れはありませんので、ご安心を。

 

 

 

 

 

さらに新刊! 2018年に『堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final』が発売されました。

*堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final (マイナビ将棋BOOKS)* 定価:1,694円

著:飯島 栄治 2018年7月11日発売。 『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法』で書き切れなかった「対後手向かい飛車」と「対後手三間飛車」を書いた続編! ほか「飛車香落ちでの引き角戦法」「香落ちでの引き角戦法」について解説。 これであなたも「飯島流引き角戦法」を極める事が可能!

『堅陣で勝つ!飯島流引き角戦法 Final (マイナビ将棋BOOKS)』の商品レビューを読む。(『Amazon』のカスタマーレビューへ移動。)

『対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法』の続編で、内容は前巻からの応用編となっています。
「後手向かい飛車」と「後手三間飛車」、「飛香落ち」、「香落ち」に対する引き角戦法の指し方を紹介した、ちょっと玄人向きの内容です。

「飯島流引き角戦法」を体得した後で、さらに序盤の隙を無くしたいエキスパート用の本です。

 

書籍化の影響も大きく、2006年以降「飯島流引き角戦法」は「ゴキゲン中飛車対策」として頭角を現したのです。

 

 


△「飯島流引き角戦法」 プロの実戦例

プロで採用された証拠として、実戦譜を紹介しましょう。

1.2004年 王位戦 中田功 対 飯島 ←クリックで再生。
ゴキゲン中飛車対策として「飯島流引き角戦法」を採用!
固めて仕掛けるという居飛車らしい将棋で勝利を飾る!

2.2006年 朝日オープン 藤井猛 対 羽生 ←クリックで再生。
なんとこの戦法を羽生善治先生が採用。
相手は振り飛車御三家の藤井猛先生! 結果は残念ながら引き角の負けだが、トップ棋士が採用した事で話題を呼ぶ。

3.2008年 NHK杯 長沼 対 佐藤康 ←クリックで再生。
他に佐藤康光先生がNHK杯で採用。 美濃囲いを一手差で斬って引き角勝利。

 

 


◆「平美濃返し&飯島流引き角戦法」まとめ

と言うわけで、飯島栄治先生の手により「平美濃返し」は「飯島流引き角戦法」へと進化しました。
ただの「B級戦法」が、こうしてプロも使う「A級戦法」となったのです。

 

最後に「平美濃返し」と「飯島流引き角戦法」の違いは何なのか?
手順や局面は同じなのに「飯島流引き角戦法」と呼ばれる理由は何故?

これをまとめて終わりましょう。

 

一言で言うと、こうです。

B級戦法だった「平美濃返し」に飯島栄治先生が研究で改良を加え、対四間飛車以外に対ゴキゲン中飛車にも使えるように研究したのが「飯島流引き角戦法」です。

飯島栄治先生は「平美濃返し」に新たな命を吹き込んだのです。

【再掲載 2004年 中田功 対 飯島 実戦図】
"平美濃返し"から"飯島流引き角戦法"へ

●最後に 何故飯島流引き角戦法がプロで指されたのか? 3つの理由。

1.2004年に飯島栄治先生が「ゴキゲン中飛車対策」の手順を研究して実戦投入した。

2.居飛車は▲7六歩と角道を開けていないので「藤井システムの角筋を使った攻め」を根本的に食らわない。

3.さらに「角交換振り飛車対策」になっている。(角道を開かないので角交換が起こらない。)

上記の三つの理由で「飯島流引き角戦法」はプロでも採用される「A級戦法」になったのです。

 

 

・・・だが、この『B級戦法の達人』はまだ終わりません。
『B級戦法の達人』は、後のメジャー戦法をまだ隠し持っていました。

 

 


◆~次回予告~  「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」編!

次回! 「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」編!

あの藤井猛先生が登場! 筋の悪い「B級振り飛車」を、トッププロに通用する「A級振り飛車」に進化させた・・・!(逆襲!変幻飛車図)

【逆襲!変幻飛車図】
今では見慣れた形だが、当事はB級戦法だった。

 

 


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◇次回の記事 「逆襲!変幻飛車」から「角交換四間飛車」編!



 

 


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